長野県の御嶽山噴火災害と、神城断層地震の二つの災害を取材
日本赤十字社愛知県支部と朝日新聞名古屋本社の防災学習企画「子ども新聞プロジェクト」が4年目の夏を迎えました。
この企画のコンセプトは、被災者の方の経験や想いを赤十字のネットワークを通じ、義務教育の中で伝えていくことです。
愛知・岐阜・三重の青少年赤十字加盟小学校から子ども記者(小学6年生)を募り、新聞記者から取材方法や記事の書き方などの指導を受けた後、被災地で取材を行い、彼ら自身の手で新聞記事を執筆し、三県の小学校の3~6年生に35万部のタブロイド紙が届けられるという流れになります。また、この企画の財源の6割が、コンセプトに賛同した東海地方の地場企業が紙面に掲載する広告収入によって賄われていることも特徴的です。
朝日新聞社で新聞記者になる勉強をしてから取材に出かけました
今年は、私たちにより近い被災地を取材しようということで、御嶽山噴火や神城断層地震などの災害に⾒舞われた⻑野県を取材。東海地方の身近な災害を知ることで、読者である子どもたちに防災意識を⾼めてもらうことがねらいです。
御嶽山噴火
2014年(平成26年)9月27日に発生。死者数は戦後最悪の58人となりました。
王滝村役場
取材は真剣そのものです。一言も聞き漏らすまいとメモを取り、疑問に感じたところは鋭く質問します
王滝村役場は御嶽山噴火時に災害対策本部となった場所です。役場には、職員だけでなく自衛隊・警察・消防などが集まり、情報の共有や今後の展開について話し合われていました。ここでは、当時マスコミが殺到した役場で、実際に記者レクチャーを担当していた総務課の森本克則さんを取材。情報を発信する際に問われる正確性や責任の重さを聞き、子ども記者も記者として身が引き締まる思いでした。
木曽福島保健福祉事務所
3人の保健師さんから当時の話をお聞きしました
木曽福島保健所は、御嶽山噴火時に避難所・待機所に保健師を派遣していました。特に待機所の運営では、「被災者家族サポートチーム」を作り、保健福祉事務所だけでなく長野県内の保健師や日赤と共同で、被災者家族の心のケアを24時間対応で担当。被災者の家族に寄り添い、「一緒に待たせてもらっている、という気持ちで対応した」という保健師さんたちに子ども記者は真剣に話を聞いていました。
安曇野赤十字病院
御嶽山噴火時に山頂でトリアージを行った上条剛史医師
現在安曇野赤十字病院で嘱託医をされている上条剛史先生は、御嶽山噴火時に山頂でトリアージを行った医師です。初めての経験である噴火災害での医療は困難を伴い、現場には常に緊張感があったそうです。
また、上条先生は災害派遣医療チーム(DMAT)に所属。今回の噴火だけでなく、数多くの災害時に出動されています。先生の話す「おたがいさま」という言葉が印象的で、「自分や自分の大切な人が困っている時に助けてほしい。だから自分が助けられる時はできるだけのことをして助けたい」という話に、子ども記者は感銘を受けていました。
神城断層地震
2014年(平成26年)11月22日、長野県北部、北安曇郡白馬村を震源として発生。小谷村、小川村、長野市で最大震度6弱を観測しました。
白馬村役場
自主防災組織の活動着を見せていただいた
神城断層地震の震源となった白馬村は震度5強を観測。堀之内地区と三日市場地区では、117軒中116軒が被害を受けました。そのような大きな被害があったにもかかわらず死亡者数がゼロだったことから、「白馬の奇跡」と呼ばれています。
地域の結びつきが強く、「災害時住民支え合いマップ」という災害時にどの家の人がどの人を助けに行くか、というルールが作られていたそうです。子ども記者は、地域で協力することの大切さを学びました。
小谷村役場
保健師さんのお話を聞きメモを取る子ども記者
震度6弱を記録し、白馬村と並んで被害の大きかった小谷村。特に避難所の様子と保健師の活動について取材しました。避難所では、プライバシーの確保やお風呂の問題で困ったこと、不平不満はみんなで話し合って解決したことなどを伺いました。また当時、すべての家を回った保健師さんの活動を聞き、村民の方を想う親身なサポートに、子ども記者はとても関心を持ちました。
ワークショップ(編集会議)
学校の授業をしているように進めていきます
取材内容をカードに書き出しまとめていきます
取材後は、宿に戻ってから毎日ワークショップ(編集会議)を行いました。
取材で聞いたこと感じたことを、一度書き出したり、みんなで話し合ったりすることで、何をどのような流れで書くとよいかを整理することができます。他の子ども記者の意見も取り入れながら、事実・エピソード・感想の三段落で記事を書き上げました。